ここまででAIについてお話してきましたが、AIを一から作ろうとすると非常に莫大な費用がかかり、実際には難しいと思います。しかし、技術の進歩により、後発でもこのAI競争に参入できる時代になっています。
ここで「研究開発のススメ」ということで、少しお話したいと思います。現在のAIの研究開発、特に全知全能のAIであるAGIに関しては、兆円単位の投資合戦が続いているため、参戦はほぼ不可能です。日本の多くの企業は、ユーザーとしてAPIを活用し、簡単にアプリからAIを利用するという手段を取っています。
一方で、オープンソースモデルを活用する方法もあります。例えるなら、OSでいうところのWindowsとLinuxのような関係です。現在、データセンターではLinuxサーバーが多く使用されているように、オープンソースのソフトウェアが時間と共にどんどん良くなっていく例は非常に多くあります。
NVIDIAのH100 GPUが8枚搭載されたサーバーが1台あれば、現在公開されている多くのオープンソースモデルを動かすことができ、カスタマイズやファインチューニング、RAGといった技術も試すことが可能です。しかし、こうしたサーバーを購入すると1台数千万円、さらに毎月の電気代が100万円ほどかかります。また、AWSを利用すると、月額で1000万円程度が必要で、1年固定契約の場合でも月額500万円程度です*1。こうしたコストが、日本企業がAI競争に参戦しにくい一因となっています。
私たちは現在、ある程度のGPUリソースを持っています。日本のベンチャー企業がAIに大規模な投資をするのは難しい状況ですが、私たちが持っているGPUをシェアして、研究開発を一緒に進めてみませんかという提案をしています。
AIは実際にやってみないと、その可能性や課題が分かりませんが、試してみるためには数千万円の費用がかかるのが現状です。そこで、私たちのマシンを利用しやすい価格で半年間貸し出すことで、オープンソースのモデルを活用し、手元のデータを流し込んで、実用に耐えるビジネスを作れるかどうかを検証してみることができるのではないかと考えています。
AIを使ったビジネスを考えていて、作りたいAIのイメージがあるならば、Hugging Faceから最適なモデルを見つけ出し、カスタマイズの方法については私たちやパートナー企業が支援します。そのデータを使ってどんなAIができるか、まずは試してみてはいかがでしょうか。
これを実践することで、社内の担当者の皆さんがAIをより身近に感じられるようになり、その結果、社内全体のAIリテラシーが向上することが期待できると思います。
質疑応答&ディスカッション
ディスカッションの時間では、参加者の皆様に、自社のビジネス拡大に向けたAI活用のアイデアを発表していただきました。各社が、自社の業務でAI化できたらいいなと考えている点について意見を交換しました。多くの企業が、顧客データ、業務データ、商品データなど多種多様なデータを保有している一方で、それらをどのように効果的に活用すれば良いのかについて模索している状況が浮き彫りになりました。
また、AIを開発・導入するための費用がどの程度かかるのか不透明であることも、共通の課題として挙げられました。当社メンバーは、これらのアイデアについて、その実現可能性や具体的な実現方法、開発にかかる費用感について説明し、参加者の疑問にお答えしました。こうしたディスカッションを通じて、AI活用に向けた具体的な一歩を踏み出すためのヒントを得られたのではないかと思います。
おわりに
今回のセミナーでは、AIの最新動向から具体的な活用事例、そして研究開発の進め方まで、幅広い内容をお届けしました。AI技術は日々進化しており、その活用方法も多岐にわたります。企業がどのようにしてAIをビジネスに取り入れ、競争力を高めていくかが、今後ますます重要になるでしょう。
このセミナーが、参加された皆様のAI活用に関する視点を広げ、実際のビジネスでの導入に向けた具体的なアクションにつながることを願っています。AIは非常に強力なツールであり、その可能性を最大限に引き出すためには、正しい理解と戦略的な活用が求められます。今回の講座で得た知見を、今後のビジネス展開にぜひ活かしていただければと思います。
フィックスターズとしても、今後も皆様のAI活用を支援し、共に新たな価値を創造していけることを楽しみにしています。引き続き、ご支援とご協力をよろしくお願い申し上げます。